坂根厳夫さんは、私にとってはIAMAS初代学長である。学長といっても遠い存在ではない。IAMASの関係者は、みな坂根さんの薫陶を受けている。学生にも気さくに接してくれる方だった。
坂根さんが学長でなかったら、IAMASに「芸術」は入らなかっただろう。メディアアートの教育拠点として、開校当時から唯一の存在感を放っていたが、地域の情報産業の人材育成とはやや遠くなってしまったことを岐阜県はどう感じていたのだろうか。
坂根さんは、世界中からアーティストを招聘しては、展示、講演、談話などをやるよと、学生に呼びかけてくださる。
メディアアートのことがよく分かっていないときに、無理な相談事をしたことを覚えている(学長に直接相談できるだけでもよい学校だ)。
学生のことは、ほんとうによく覚えていらっしゃった。人の名前よりも作った作品のことを伝えれば分かってくれる。坂根さんの頭の中には、学生作品がつまっているのだ。
いつもビデオカメラを片手にあちこち取材されていて、好奇心の塊のような方だった。いまも科学と芸術の境界域を冒険されていらっしゃるはずである。