5月14日の鯉のぼり


前回の投稿から1ヶ月、熊本に行った。見物に行ったわけではないので、写真は撮っていない。記録として撮っておくとよかったかもしれないが、そんな気分にはならなかった。

4月14日の地震は「前震」だった。16日未明に「本震」が起こった。「本震」の前に、NHKで専門家が次のように言っていたことをおぼえている。

「余震が本震を上回ることは絶対にありません。
 (14日の)本震より大きな余震はないので落ち着いてください」

残念ながら、この言葉は間違いだった。専門家にとっても想定外の地震活動だったようだ。災害は予測できないことをあらためて認識させられる。自然現象においては、安易な将来予測はデタラメだとおもっておいたほうがよいかもしれない。

さて、いろいろな都合があって熊本にはなかなか行けずにいた。地震後はじめての熊本は、奇しくもちょうど1ヶ月の日になった。

地震はすでに風化の段階に入っている。現地を見る限り、この地震は伝わりにくいと感じた。被害が一様ではなく、「まだら」で見えにくいからだ。瓦屋根にかぶされえたブルーシートが象徴的だった。すべての家屋の屋根が損傷しているのではなく、点在している。被害は、報道が集中している町だけではなく広範囲におよんでいる。痛々しいブルーシートによって、家屋の被害は可視化されているように見えた。しかし、それ以外の被害の様相は一見しただけではわからない。

NHKラジオの熊本放送局では、何度も地震に関する情報を伝えていた。

「食中毒のおそれがあるので、消費期限が切れた食品は食べないでください」

相変わらず、ちょっとお説教っぽい口調が気になった。もうすこし寄り添うような言い方ができないものか。

帰路の途中、大きく立派な家屋が目に入った。広々とした屋根がすべてブルーシートでおおわれている。青空よりも鮮やかなシートを背景に、大きな鯉のぼりがゆったりと泳いでいた。もう端午の節句は過ぎている。家主がまだ片づけずにいるのだろう。日常生活をとりもどす決意をこめて。

追記

行きは一般道、帰りは高速道を利用した。高速道は一部対面通行で再開していたことは知っていたが、大きな渋滞にはまってしまった。対面通行区間の直前で、車間の維持や車両重量の確認のためか、一時停止が必要だったからだ。電光掲示板には、渋滞ではなく「停滞」と表示されていた。高速道の完全復旧にはまだ時間がかかりそうだった。