阿部共実,2014,『ちーちゃんはちょっと足りない』秋田書店.


なにかの評で買って積んでいたのを、まったく前情報なしで読んだ。中学生たちの日常を描いたほのぼのした漫画かとおもいきや、人間の心の闇を描く恐ろしい作品だった。

まず、タイトルにだまされる。ちょっと足りない=知能の発達がおくれている、ちーちゃんの言動をあたたかく見守る物語だととらえてしまう。実際には、ちーちゃんをとりまく同級生たちの群像劇だ。なかでも、ちーちゃんの友人、ナツが真の主人公だった。

読み進めてわかるのは、何か「足りない」のは、ちーちゃんではなく、ナツのほうだということ。いつも周りと比べて、欠乏感と羨ましさばかりが募らせている。ちーちゃんとつきあっているのは、友情なのか、「足りない」同士という連帯感なのか。

ちょっとした事件をきっかけに、ちーちゃんの周りの人間関係が大きく動く。しかしナツだけは変わらず、「足りない」ままだ。それでもナツは、ちーちゃんにすがる。そこに友情はあるだろうか。こども時代に周りとのささいな差異になやんだことのある者なら、だれでも思いあたるところがあるだろう。心の奥にしまっていた苦い思い出を浮かび上がらせる残酷な物語だった。

ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)

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