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増山たづ子という「写真家」

新宿のコニカミノルタプラザで、増山たづ子写真展「遺されたネガから」を観ました。
平日の昼間でしたが、年配の方中心にたくさんの来場者でにぎわっていました。

増山たづ子さんは、徳山ダム建設で水没する岐阜県徳山村の記録を撮りつづけたアマチュア写真家です。
写真は、村のさまざまな行事や風景、人々を撮影技巧を凝らすことなく写しています。
人々の表情は、村人でなければけっして撮ることのできない自然なものです。
徳山村の風景は特別なものではなく、誰でも自分の故郷が思い出されるような日本の田舎の風景そのものです。

彼女は、一眼レフではなく一般的なオートカメラを使いつづけました。
彼女の写真は、プロではない人による売り物ではない表現です。
その表現が大きく取り上げられるようになったのは、やはりダム建設問題の現場のドキュメンタリーであるという社会的背景が大きいはずです。
写真そのものよりも、彼女がどのようにしてデビューし、有名になったのか。つまり、プロデュースしたのは誰だったのかが気になりました。
すくなくとも朝日新聞は、今回も主催者のようですし、大きく関わっていたようですね。

会場で上映されていた名古屋テレビ(メ〜テレ)の特集映像は、いただけませんでした。
せっかくの取材が、安っぽいBGMで台無しです。会場にこの音楽が響いてしまっているので、感動の押し付けがましさが目立ってしまって残念です。
久々に安っぽい名古屋のローカル番組を思い出しました。

増山たづ子さん亡き後の関係者にインタビューした新聞連載記事のなかでも、彼女のおいの小学校の先生の言葉が印象的でした。
彼女を、戦争の被害者、ダムの被害者として描くのは簡単ですが、ただのセンチメンタリズムで語ってはいけない写真家だと思いました。
彼女がカメラを手にする前は、テープレコーダーで生活音などを録音していたといいます。
その音がどんなものだったのか聞いてみたいものです。


“増山たづ子 徳山村写真全記録” (増山 たづ子)

増山たづ子写真展
http://konicaminolta.jp/plaza/schedule/2008december/gallery_bc_081202.html

キャラクタービジネスとしてのNHK

NHK教育フェアに出かけました。お目当ては、「そうぞうライブラリー」展示ブースです。前日にNHKの方からメールでご案内いただきました。情報に感謝です。NHKも、ようやくBBC Creative Archiveのような二次創作可能なライセンスで映像を提供するようなので、これは見ておこうと思いました。しかもこども向けということは、コンテンツにも工夫があるだろうと期待していました。

NHK教育フェア
http://www.nhk.or.jp/edu-fair/

Creative Archive
http://creativearchive.bbc.co.uk/

「そうぞうライブラリー」は、ソフトウェア「そうぞうエディター」を使って、あらかじめ用意された映像素材を編集して短い作品をつくることができるものでした。「そうぞうエディター」は、さいきん話題のWindows用映像編集ソフトウェアLoiLoScopeがベースになっているとのこと。
http://loilo.tv/vpo/pressJP.html

映像素材は、自然の風景を中心にとてもきれいです。さらに、動く「どーもくん」や「おしりかじりむし」といったキャラクターを合成できます。編集のイン点・アウト点で、自動的に短時間のフェードイン・フェードアウトがかかっていて、きれいに仕上げてくれます。

しかし残念ながら、これは、こどもの創造を広げるコンテンツではありませんでした。キャラクター、背景、文字、音声というレイヤーが決められています。これを開発した大人たちは、こどもがつくる作品の枠を想定しすぎではないでしょうか。もちろん、こどもたちは、枠を超えた想定外ものをつくりのけるでしょうが、彼らにとってもちょっときゅうくつな箱庭だと思います。「キャラ」というレイヤーの存在が象徴的です。背景とキャラを合成するのは映像の楽しみのひとつだとは思いますが、それだけでは映像制作の魅力を矮小化していると思いました。

とはいえ、来年秋に公開予定で準備が進んでいるそうですので、今後に期待したいところです。

さて、となりのNHKスタジオパークも無料公開されていたので、入ってみました。

NHKスタジオパーク
http://www.nhk.or.jp/studiopark/

デジタル放送の宣伝や、番組の宣伝や、制作体験や、とにかく賑やかな展示が盛りだくさんです。教育フェアもそうでしたが、随所に説明役のお姉さんがいて、黄色い声を張り上げています。説明役にNHKのOBの方を起用してくれたほうが、だんぜん面白そうです。全体的に、とても20世紀博覧会的な展示で、タイムスリップしたようでした。自宅でテレビをやめたせいもあるのですが、まるで古いメディアとして「テレビ」の博物館を見ているような錯覚に陥りました。「そういえば、テレビってこういう華々しいメディアだったなあ…」としみじみ過去を振り返る感じです。来場者のほとんどが、小学生の団体と高齢者だったのが、いまのテレビの視聴者層を反映しているようでした。

実際の収録スタジオが、窓越しにのぞき見られるようになっているのは面白かったです。来場者がフラッシュ撮影すると、収録に支障が出るからカーテンが閉められるそうですが、すでにほとんどカーテンが閉まっていました。それでもカーテンのすき間から、大河ドラマのスタジオセット、新・日曜美術館の収録風景、ある特別番組の準備風景をのぞき見ることができました。

スタジオパークのおみやげ屋さんには、多くのキャラクターグッズが並んでいました。NHK前の広場のステージでは、キャラクターと一緒に多くのこどもたちが踊っていました。このような風景を見ると、NHKは、まるでキャラクター産業の一企業だと思わざるをえません。キャラクターを売ることは、テレビの愛好者を増やすことには寄与するでしょうが、こどもの創造性をひろげることにつながるかは疑問です。

丸善丸の内本店「第45回せかいの絵本展」

朝倉民枝さんが制作されているインタラクティブ絵本「ピッケのおうち」の新しい展開です。
ピッケの「おはなしづくりソフト」で小さな絵本作りができるワークショップが開催されます。
直前ですが、お知らせを掲載します。私は残念ながら行けないです。

ピッケが、本屋さんに初登場!
東京駅丸の内口すぐのオアゾにある丸善丸の内本店で、「せかいの絵本展」の
会期中、タッチディスプレイ版を展示します。21日(日)には、ピッケのミニ絵
本を作るワークショップもします。
去年の秋から作り続けてきたおはなしづくりソフトが、ようやくお披露目です。
■ 開催日時: 2008年9月17日(水)〜9月23日(火・祝)
9:00〜21:00 (※最終日は16:00閉場)
ワークショップは 9月21日(日)
11:00〜13:00、14:00〜16:00 各回親子4組 当日先着順
■ 開催場所: 丸善丸の内本店 4Fギャラリー
■ URL:   http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/3532.aspx

これまでも、ピッケのペパドル(紙の工作)で、ごっこ遊びをしたり、おはな
し作りをして、遊んでもらってきました。
そのおはなしづくりを、絵本にするところまで進化させたのが、このソフト。
画面上の簡単な操作でおはなしづくり。プリントして、切って折ってホチキス
で留めれば、世界でたった1冊の小さな絵本のできあがり!
子どもはもちろん、大人も楽しめるソフトです。各回4組の親子にご参加いた
だけます。見学のみもできますので、お気軽にお越しください。

http://picke.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-9a02.html

リンツの名所発見

Enterance

オーストリア第3の都市・リンツ。
ここは、のどかで美しい小さな街で結構気に入っています。
しかし、決定的な観光名所が見当たりません。
日本の旅行ガイドにはあまりリンツは載っていないので、観光スポットを探すのが難しい街ですね。

しかし今回ついに名所を発見しました!
リンツのホストファミリーに連れていってもらったのです。

街の北西にペストリンクベルクという山があって、頂上に教会があります。
この教会は、街からもよく見えて、まさに街のシンボルです。
しかし、今まで行ったことがありませんでした。

ここへのアクセスは登山列車なのですが、今年は工事中でした。
なんとこの登山列車、来年にはトラムと接続されるんです。
ずいぶんアクセスしやすくなります。
→関連ブログ
http://urbantransit.seesaa.net/article/36438836.html

実は、この山頂の教会の奥に、面白いエンターテインメントがありました。
結婚式を終えたばかりの教会を見学し、近くを歩いていると、なにやら半分地下に埋まったような古い石造りの建物がありました。建物の周囲は堀になっていて、鹿が飼われていました。お父さんが、「竜の列車でぐるっと回って地下に降りるんだ。行くか?」と尋ねてきたので、何のことかわからないけれど面白そうなので、すかさず行きたいとお願いし、連れていってもらいました。
時刻は土曜日の16時20分。最終入場が16時30分だったので、ギリギリセーフでした。お客さんは、私たちの他に、小さな子連れの家族が2組でした。大人3名で入った私たちは、明らかにヘンなお客さんに見えたことでしょう。土曜日の夕方なのに、こんな閑散ぶりで経営は大丈夫なのかしら。

内容は、竜の列車に乗って、ほとんど真っ暗の洞窟の中を抜けていきます。洞窟の壁は、ところどころくりぬかれていて、童話の場面を再現した小さな人形があります。
地下は、昔のリンツの中央広場を再現した数分の1スケールのリトルパークになっています。広場に面した建物の1階の窓はショーウインドウになっていて、スポンサーの広告が入っているようです。建物と建物の間の路地を抜けると、こちらには童話の一場面が等身大の人形で再現されています。
そう、ここはグリム童話をテーマにしたテーマパークでした。ディズニーランドの原型は、こういった施設なのではないでしょうか。でもここには、ディズニーランドのような派手さは全くありません。ですが、来場者は、この程度のエンターテインメントの方が、それぞれにゆっくりじっくりとイマジネーションすることができて心地よいと思います。ここの押しつけがましくないメルヘンチックな演出は、私のテーマパーク観には全くないものだったので、脱帽しました。
リンツに行ったらココ、絶対オススメします。

Grottenbahn(グロッテンバーン・洞窟列車)
http://www.oberoesterreich.at/grottenbahn/

さて、ドナウ川の南側、もう一つの山にも連れていってもらいました。ここには塔があって、らせん階段をぐるぐると登ると、絶好の景色が望めます。
ドナウ川がよく見えました。川の北側の岸に自動車道があって、毎朝、西側からの通勤車両が都市部に流入し渋滞が慢性化しているらしく、今後数年かけて都市部をバイパスする新しい橋とトンネルを建設するそうです。
こちらの山は、バスで行けます。

どちらも高台のエリアは、高級住宅地だそうです。南側の山には、お菓子「PEZ(ペッツ)」の創業者の家がありました。この家には、いまは誰も住んでいませんが、最上階に3面ガラス張りの小部屋がありました。きっと彼はこの部屋のソファに座って、眼下に広がるリンツ市街を一望していたのでしょうね。

→関連ブログ
日本語の情報はこの2つしか見つけられませんでした。
http://mixedmoss.blog.so-net.ne.jp/2005-10-02-1
http://blog.goo.ne.jp/mizukatahideya/e/4bc3573127bbe60fdf38c1075e6179cd

Ars Electronica Festival 2008 brief report

Morning in Linz

I went to Ars Electronica Festival 2008 in Linz, Austria this summer. I like this beautiful small city.
http://www.aec.at/en/festival2008/

This year’s festival seemed a little quiet. Ars Electronica Center, the mountain train, there were many things under renovation in Linz. Because of a preparation for next year. Linz will be an European capital of culture 2009.
http://www.linz09.at/en/

This year’s festival theme is “A NEW CULTURAL ECONOMY.” The theme is not so exciting word but is reflecting important change of the festival. I think the meaning of participation is changing dynamically in the last few years. Participation is no longer ad hoc relation with each project. Many artists aim at a making relation with society.

Digital Communities category of Prix Ars Electronica is very relevant to the theme but its exhibition was only panel. I hope next year’s festival will be great.

I met my important friends living there again. I spent wonderful days at Linz.