氾濫するイメージ

気になる作家が多かったので、八王子市夢美術館の企画展「氾濫するイメージ」を観に行きました。

会場の八王子市夢美術館は、ビルの2階にある美術館でした。天井高も高くなくて、美術館というよりも貸ギャラリースペースのような佇まいです。会場入口にいた警備員は、「異状ありません!」と、ずいぶん仰々しい敬礼つきで交代していて笑えました。文化というよりもお役所の香りが感じられます。でも、なかなかマニアックな企画展がたくさん開催されている不思議な美術館です。

展覧会は、主に昭和40年代のポスターや装丁や漫画など、好きな人にはたまらない、でも肌に合わない人には気持ち悪いだろうイメージが並んでいます。ちなみに、私は好きなほうです。印刷のための原画の展示が数多くあって、作家が書き入れたであろう色指定などの印刷のための指示がとても興味深かったです。

図録を買いたかったのに、すでに売り切れらしく、次の巡回展の会期中に美術館に問い合わせろと掲示してありました。注文ぐらい受けつけてほしいけれど、売る気がないのかな。

赤瀬川原平が、漫画を描いているとはしりませんでした。画風が、つげ義春にそっくりで、勘違いしそうになります。というか、いろいろな漫画家のタッチの真似がうますぎます。

タイガー立石は画家だと思っていたけれど、漫画を描いていました。毎日中学生新聞に連載されていたという『コンニャロ商会(モータース)』の原画がありましたが、このコマ割りやユーモアがとても面白かったです。これは隠れた名作だと思います。

この時代の社会状況や雰囲気は、生きていないのでよく想像できません。ただ、社会の大きな変動と同時に、ビジュアルの世界でも大きな波が押し寄せていたのだなと感じました。どの作家も、前衛とアングラとコマーシャルをやすやすと横断して活動しているのが印象的で気持ちがよかったです。

横尾忠則のアングラ演劇のポスターなどが好きな方には、おすすめの展覧会です。

「氾濫するイメージ 反芸術以後の印刷メディアと美術1960’s – 70’s」
八王子市夢美術館
2009年4月4日(土) ー 2009年5月17日(日)
http://www.yumebi.com/

出品作家
赤瀬川原平
粟津潔
宇野亜喜良
木村恒久
タイガー立石
つげ義春
中村宏
横尾忠則

巡回展

2009年8月29日(土)〜10月12日(月・祝)
栃木県の足利市立美術館
http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/

追記
Mixi日記でコメントいただきましたが、この展覧会は、うらわ美術館からはじまっていたそうです。
うらわ美術館
http://www.uam.urawa.saitama.jp/

リンツの名所発見

Enterance

オーストリア第3の都市・リンツ。
ここは、のどかで美しい小さな街で結構気に入っています。
しかし、決定的な観光名所が見当たりません。
日本の旅行ガイドにはあまりリンツは載っていないので、観光スポットを探すのが難しい街ですね。

しかし今回ついに名所を発見しました!
リンツのホストファミリーに連れていってもらったのです。

街の北西にペストリンクベルクという山があって、頂上に教会があります。
この教会は、街からもよく見えて、まさに街のシンボルです。
しかし、今まで行ったことがありませんでした。

ここへのアクセスは登山列車なのですが、今年は工事中でした。
なんとこの登山列車、来年にはトラムと接続されるんです。
ずいぶんアクセスしやすくなります。
→関連ブログ
http://urbantransit.seesaa.net/article/36438836.html

実は、この山頂の教会の奥に、面白いエンターテインメントがありました。
結婚式を終えたばかりの教会を見学し、近くを歩いていると、なにやら半分地下に埋まったような古い石造りの建物がありました。建物の周囲は堀になっていて、鹿が飼われていました。お父さんが、「竜の列車でぐるっと回って地下に降りるんだ。行くか?」と尋ねてきたので、何のことかわからないけれど面白そうなので、すかさず行きたいとお願いし、連れていってもらいました。
時刻は土曜日の16時20分。最終入場が16時30分だったので、ギリギリセーフでした。お客さんは、私たちの他に、小さな子連れの家族が2組でした。大人3名で入った私たちは、明らかにヘンなお客さんに見えたことでしょう。土曜日の夕方なのに、こんな閑散ぶりで経営は大丈夫なのかしら。

内容は、竜の列車に乗って、ほとんど真っ暗の洞窟の中を抜けていきます。洞窟の壁は、ところどころくりぬかれていて、童話の場面を再現した小さな人形があります。
地下は、昔のリンツの中央広場を再現した数分の1スケールのリトルパークになっています。広場に面した建物の1階の窓はショーウインドウになっていて、スポンサーの広告が入っているようです。建物と建物の間の路地を抜けると、こちらには童話の一場面が等身大の人形で再現されています。
そう、ここはグリム童話をテーマにしたテーマパークでした。ディズニーランドの原型は、こういった施設なのではないでしょうか。でもここには、ディズニーランドのような派手さは全くありません。ですが、来場者は、この程度のエンターテインメントの方が、それぞれにゆっくりじっくりとイマジネーションすることができて心地よいと思います。ここの押しつけがましくないメルヘンチックな演出は、私のテーマパーク観には全くないものだったので、脱帽しました。
リンツに行ったらココ、絶対オススメします。

Grottenbahn(グロッテンバーン・洞窟列車)
http://www.oberoesterreich.at/grottenbahn/

さて、ドナウ川の南側、もう一つの山にも連れていってもらいました。ここには塔があって、らせん階段をぐるぐると登ると、絶好の景色が望めます。
ドナウ川がよく見えました。川の北側の岸に自動車道があって、毎朝、西側からの通勤車両が都市部に流入し渋滞が慢性化しているらしく、今後数年かけて都市部をバイパスする新しい橋とトンネルを建設するそうです。
こちらの山は、バスで行けます。

どちらも高台のエリアは、高級住宅地だそうです。南側の山には、お菓子「PEZ(ペッツ)」の創業者の家がありました。この家には、いまは誰も住んでいませんが、最上階に3面ガラス張りの小部屋がありました。きっと彼はこの部屋のソファに座って、眼下に広がるリンツ市街を一望していたのでしょうね。

→関連ブログ
日本語の情報はこの2つしか見つけられませんでした。
http://mixedmoss.blog.so-net.ne.jp/2005-10-02-1
http://blog.goo.ne.jp/mizukatahideya/e/4bc3573127bbe60fdf38c1075e6179cd

Exploratoriumがすごい!


WWDC参加のためサンフランシスコへ行ってきましたが、合間をぬって観光もしてきました。

そこで最も印象にのこったミュージアムが、エクスプロラトリウム(Exploratorium)です。
http://www.exploratorium.edu/

Exploratoriumは、体験型のミュージアムです。
さまざまな科学的な実験を手軽に体験できる展示がたくさん揃っています。
展示は、知覚に訴えるもの、映像や音声などのメディア表現に関するもの、さまざまなバリエーションがあります。
入場者は、こどもはもちろん、大人もたくさん来ていました。

いくつか気に入ったポイントです。
・巨大な倉庫という建築
・展示物を制作している工房workshopが来館者に丸見えなこと
・完全に大人向けの解説文
こどもが親に意味を聞いたり、親が教えたりすることを、うまく促しています。
・基本的に放任
親切な解説員はいません。遊び方は自分で見つけろ!
日本ではぜったい触らせないような、ちょっと危ないものもある。それもいい経験だ!

ちょうど会期中のMIND展は、単純な科学展示のみならず、社会的な問題、認知やステレオタイプにまで言及している意欲的な内容で、非常に興味深かったです。

ミュージアムショップに「Exploratorium Cookbook」というシリーズ書籍がありました。
この本では、Exploratoriumの展示物のしつらえが詳細なイラストと解説文の完全引用で構成されています。
とても欲しかったのですが、1冊100ドル以上もしたので購入は断念。
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サンフランシスコへ観光される方へ、1日はExploratorium訪問に費やしてもいいと思いますよ。