《スラムドッグ$ミリオネア》は、「弟モノ」だ!


映画《スラムドッグ$ミリオネア》(Slumdog Millionaire)を観ました。

スラムドッグ$ミリオネア
http://slumdog.gyao.jp/

Slumdog Millionaire
http://www.slumdogmillionairemovie.co.uk/

おとぎ話のようでノリのよいエンターテインメント作品でした。

1.《スラムドッグ$ミリオネア》で、スラムはわからん!

スラムの野良犬こと、スラムドッグが主人公なので、インドのスラムの様子が描かれていますが、これはお話なので、インドのスラムについて分かるわけではありません。スラムを描いたドキュメンタリー映画として、こちらもオスカーを獲った《未来を写した子どもたち》(Born into Brothels: 売春窟に生まれて)も、とても興味深かったのでオススメします。もちろん、こちらの映画を観ても、本当のことは何もわからないことには代わりありませんけれど。

未来を写した子どもたち
http://www.mirai-kodomo.net/

Born into Brothels
http://www.kids-with-cameras.org/bornintobrothels/

Kids with Cameras
http://www.kids-with-cameras.org/

2.《スラムドッグ$ミリオネア》は、音がいい!

映画を観ていて気になったのは、いろいろな「音」です。

ひとつは、TV番組「ミリオネア」のなかの音です。このTV番組は、演出やビジュアルはもちろん、SEがよくできていると思いました。回答の選択肢をロックするサウンドが、番組の緊張感をうまく引き上げています。

もうひとつは、銃声音がひびく挿入歌があったことです。事前に、映画のサウンドトラックをラジオかどこかで聴いていて、ある曲のサビに銃声音が入っているのが、観る前から気になっていました。実際に使われていたシーンは、残虐なシーンではありませんでした。あとで曲と歌詞を調べてみたら、やっぱり尋常ではありません。歌手のM.I.A.はスリランカ系英国人で、その謎めいた名前は、Missing In Action(=戦闘中行方不明者)をあらわすそうです。

M.I.A.《Paper Planes》

わたしが本当にやりたいのは バン!バン!バン!バン!(銃声音)
それから カーッ チン!(キャッシャー音)
あなたから金を奪うこと

All I wanna do is (BANG BANG BANG BANG!)
And (KKKAAAA CHING!)
And take your money

これが4回も繰り返されます。なんとも恐ろしい歌詞です。プロモーションビデオでは、ニューヨークでホットドッグを売っている移民の姿として描かれていますが、その他にもいろいろな場面を思い浮かべてしまいます。

どうやら、この曲の銃声音は問題となったようで、興味深いことに、MTVでは銃声ではなくドラムの音に置き換えられているそうです。

3.《スラムドッグ$ミリオネア》は、「弟モノ」だ!

さて、私がもっともこの映画にグッときたことがあります。それは、「弟」を描いていたことです。一般的に物語にはいくつかの類型があるといわれていますが、私は「弟」という存在・心理を描く「弟モノ」というジャンルがあるのではないかと思います。そして、《スラムドッグ$ミリオネア》は、典型的な「弟モノ」ストーリーだったのです。

後半に、主人公の兄が、こんな台詞をつぶやきます。

「俺は世界の中心の中心にいる」(I am at the centre of the centre.)

スクリプトは、ここを参照しました。
http://www.imsdb.com/scripts/Slumdog-Millionaire.html

この瞬間に、私は、ああ、この映画は、六田登の漫画『ICHIGO──二都物語』のインド版なんだと思いました。『ICHIGO』も、都市の発展を背景に、歪んだ男兄弟の成長を描いた物語なのです。この場面以降、私は、『ICHIGO』を思い浮かべずに観ることはできませんでした。

とはいえ、ここを読んで『ICHIGO』を読んでも、全然関連ないストーリーじゃないの、と思われる人がほとんどだとおもいます。それでも男兄弟の末っ子である私は、『ICHIGO』と《スラムドッグ$ミリオネア》の双方が、弟が兄に対して抱く複雑な感情を見事に描いていると思ったのでした。

映画 スラムドッグ$ミリオネア(みやばら美か)
http://www.miyabaramika.com/archives/16