夏の珍客


ある日、ベランダの柚子の苗木に、一匹の毛虫がくっついていた。
その毛虫は、いつの間にか芋虫に姿を変えた。
この芋虫、実は二匹いたようだ。
こいつらは、日々、苗木の葉をせっせと食んでいた。

芋虫がどんどん大きくなったある日、一匹が消えた。
あちこち探してみたけれど、見つからない。
おそらく鳥に捕まったのではないだろうか。

残る一匹の芋虫は、食い尽くした葉の軸に止まっていた。
苗木の若葉は、ほとんど食われてしまい、もうわずかしかなかった。
苗木が先に枯れるか、芋虫が先に飢えるかの、双方の命を懸けた耐久戦だ。
その決着を先延ばしにしようと、残った芋虫を、別の苗木へ移してやった。

ところが、この一匹も、その日のうちに忽然と姿を消してしまった。
ようやく芋虫の存在を身近に感じたところだったというのに。
珍しい夏の出来事の観察も、残念ながらここまでだ。

ところが後日、網戸の内側に異変を見つけた。
なんと蛹がひとつ悠然と吊り下がっている。

8月の最後の朝のこと。
苗木に水やりしていたら、プランターの影から蝶があらわれた。
蝶は、数時間じっくりと翅を乾かした後に、いなくなった。

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