実用書は実用に供さない


「きみたち、書店でビジネス書を見ないの?」。社会人大学院生のとき、授業中に教員が放った一言だ。ビジネス書を見ると、世の中の社会のトレンドやニーズが手に取るようにわかるらしい。その人は企業組織が研究対象だから、いわばメシの種であり、そう言うのは当然といえば当然だ。

だけどビジネス書の多くは、だれかの不安をダシにした意図が透けてみえ、中身も薄く読むに堪えないものが多い。コンサルタントが書いた本はとくにダメだ(いま読んでいてげんなりしている)。どのページを開いても、営業トークをきかされている気分になる。書籍代を払うんじゃなくて、もらいたいくらい。ビジネス書は棚を見るくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。トレンドはたしかにつかめる。

なにかのノウハウ(たとえばライフハックなるもの)を伝える実用書は、筆者特有の経験やノウハウは伝えてくれるが、それが万人に通用する保証はない。時代や環境、個人の性質などが変われば、同じノウハウで課題解決できるとはかぎらないからだ。あくまで一例としてながめつつ、最終的には自分で自分なりのノウハウをあみださなければ役にたたない。そういう自分なりの探索の参考書として実用書を位置づけておかないと、期待はずれの気持ちがのこる。

薄い実用書を何冊も買ってお金と読書時間を浪費するくらいなら、古典をなんども読むほうがコストパフォーマンスが高いはず(だけどなかなかな古典と格闘できていない)。

はやく本棚サービスをつくらねばだね。

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