ビオンショをハックする!


2010年10月2日に、ICTEメル・プラッツが共催した研究会で発表しました。開催地は広島県福山市でしたが、遠方もふくめて全国各地から多数の方にご参加いただき、ありがとうございました。

このところ、まったく余裕がなかったので、こちらで報告するのがすっかり遅くなりました。もう1ヶ月ほど前のことですが、せめて10月中に、ということで、思い出しながら書いています。

はじめに、司会である同僚の飯田豊さんから、今回の企画の意図の説明がありました。
おなじく同僚の内垣戸貴之さんから、デジタル教材にいたるこれまでの教育実践の流れと、総務省のフューチャースクール推進事業の実験の紹介がありました。また、実験の小学校で使われているこどもむけの専用端末が披露されました。(わたしはさわれなかったのですが、ずいぶん重そうでした…。)
関西大学初等部の田邊則彦さんは、先進的な教室や授業や、現場の教師が抱えている問題を紹介されました。
メル・プラッツの林田真心子さんからは、メディアの「送り手」研究をされている立場から、メディアと同様、学校のなかでも固定的になりがちな関係を乗り越える提案がありました。

わたしは、ムービーカードワークショップの紹介や、デジタル教材を創造のツールにするために、利用者が遊ぶ余地をふくむ「ハッカブル」な設計思想が大切だという発表をしました。ただ、ムービーカードそのものの説明を省きすぎてしまい、仕組みがよくわからなかったかもしれません。

ところで、今回のセッションの前に、学習指導要領の解説セッションもありました。高等学校の情報科は、「情報A」「情報B」「情報C」の選択から、「社会と情報」「情報と科学」の選択に変わるそうです。学習指導要領は、およそ10年ごとに改訂されるそうで、現場の先生方は、そのたびに指導要領を読みこむんですね。大変そうです。「情報科」の教科書の見本本をいただいて中身を見たのですが、なかなか難しい内容が入っていますね。「ハッカー」と「クラッカー」の説明も載っていてびっくりしました。

学校教育の話は、ふだん聞く機会がないので、とりわけ興味深かったです。セッション中には、聞いたことのない専門用語が飛びかっていました。そのなかでも、もっとも耳に残った言葉が、「ビオンショ」です。「芸術」は、「美術」「音楽」「書道」を選択します。その3科目を頭文字で略すと、「美音書(び・おん・しょ)」。単に事務的な略語なんでしょうけど、「ビオンショ」という軽い響きは、芸術とはほど遠い感じがしますね。門外漢のわたしは、「ビオンショ」に情報科の内容をミックスしたら、おもしろいのではないかと妄想していました。メディアアートに、電子音楽、電子書籍…、ほらいけそうでしょ?(笑)

デジタル教材の教育学
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東京大学出版会
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イベントの詳細は、こちら。

第22回 メル・プラッツ公開研究会のお知らせ

■テーマ :「デジタル教材と学びのコミュニティ」

■日 時 :2010年10月2日(土)12時30分~17時30分
(※ 本セッションは 15時15分~)
■会 場 :福山大学 社会連携研究推進センター
(広島県福山市丸之内1丁目2番40号)※JR福山駅 北口徒歩1分
■登壇者 :内垣戸貴之(福山大学/ICTE)
田邊則彦(関西大学初等部/ICTE)
杉本達應(福山大学)
林田真心子(東京大学大学院/メル・プラッツ)
[司会] 飯田豊(福山大学/メル・プラッツ)
■共 催 :ICTE(情報コミュニケーション教育研究会)
福山大学人間文化学部メディア情報文化学科
■資料代 :1,500円
■事前登録:ICTEのウェブサイトから申込をお願いします。
http://www.icte.net/seminar/detail/137.php

2010年はiPadやKindleといった電子端末の相次ぐ発売にともない、「電子
書籍」に対する期待(と不安)が格段に高まり、大きな議論が巻き起こって
います。そんな中、学校教育における「デジタル教材」の導入に関する話題も
盛んになってきました。制作や流通のシステムのあり方など、業界の発想の
枠組みで語られることが多いデジタル教材ですが、それによって教育が実践
される現場=“学びのコミュニティ”はいかにあるべきか、本格的な議論はまだ
始まったばかりといえます。
教育学の分野において、デジタル教材は、既存の教科書や参考書が電子化
されるというだけでなく、その潜在的な付加価値を見出し、将来的な授業設計
に反映させることによって、学習効果の向上が期待されています。
内垣戸貴之さんには、デジタル教材が教育現場で実験的に活用されている
現状、とりわけ、コラボレイティブな教育を支援するプラットフォームが配備
された環境でいかなる実践が可能かをさぐる調査研究(フューチャースクール)
について紹介の上、デジタルに媒介された学び合いのコミュニティのあり方に
ついて、問題提起していただきます。
それを受けて田邊則彦さんには、関西大学初等部における電子黒板の実用
事例を踏まえて、初等・中等教育におけるデジタル教材を取り巻く動向の変化と、
それにともなう学習の変化についてお話しいただきます。
さらに、「書籍」や「教材」という隠喩を引き剥がすことで、別の角度から
のアプローチも可能になるはず。
第一に、これまで学校の外、博物館や美術館、大学やNPOなどを主体として
展開されてきた、デジタルメディアを活用した遊びや学びの取り組みにまで
視野を広げ、その経験の蓄積を学校教育の現場に還流できるのではないでしょう
か。メディアアートや情報デザインといった領域における表現型のワークショ
ップ活動は、デジタルメディアと人間との関係を根源的な次元から問い直す批評
性をいち早く示していた一方、技術システムの具体的な運用の次元においても、
豊潤なノウハウを有しているはずです。そこで、メディアアーティストの杉本
達應さんは、「ハッカブル」(=利用者自身がメディアを積極的に転用できる
柔軟性)をキーワードに、デジタル教材が近い将来、果たして創造的なツールに
なりうるかどうかを考えます。
そして第二に、教育現場をめぐって、デジタル教材の導入とケータイの排除が
著しいコントラストを成していることなど、社会的な次元におけるメディア変容
との相互作用を十分に踏まえ、状況を批判的に理解するという姿勢が求められる
のではないでしょうか。メディア論に取り組む林田真心子さんからは、今日にお
けるメディアリテラシーの考え方を踏まえてコメントをいただき、新しいメディア
「で」学ぶことと、メディア「を」学ぶことの分かちがたさについて考えます。
ケータイと同様、デジタル教材もひとつのメディアであるならば、そのリテラシー
はいかにあるべきか、領域横断的な議論をおこないたいと思います。

■プログラム:
11:30~     受付開始
12:30~12:40  開会のご挨拶 
三宅正太郎(福山大学教授)
12:40~13:10  海外視察報告
水越敏行(大阪大学名誉教授/前ICTE会長)
13:10~13:20  休憩(10分)
13:20~15:05 【ICTE企画】
ついに出た!学習指導要領解説
―どう展開する「社会と情報」「情報の科学」―
黒上晴夫(関西大学教授/ICTE会長)
江守恒明(関西大学中・高等部教諭)
越桐國雄(大阪教育大学教授)
山上通惠(兵庫県立社高等学校教諭)
[司会] 池田 明(大阪市立扇町総合高等学校教諭)
15:05~15:15  休憩(10分)
15:15~15:30  メル・プラッツ事務局からのご挨拶
15:30~17:00 【メル・プラッツ企画】
デジタル教材と学びのコミュニティ
内垣戸貴之(福山大学講師)
田邊則彦(関西大学初等部教諭/ICTE事務局長)
杉本達應(福山大学講師)
林田真心子(東京大学大学院/メル・プラッツ)
[司会] 飯田 豊(福山大学講師/メル・プラッツ)
17:00~17:30  全体総括・質疑応答

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※事前申込はこちらから → http://www.icte.net/seminar/detail/137.php
※お問い合わせ先
メル・プラッツ事務局<[email protected]>
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このメールは、旧メル・プロジェクトメンバー、旧「メルの環」読者の
みなさま、メル・プラッツ事務局に新たに案内のご希望をいただいた
みなさまにお送りしています。もしこのご案内が不要な方がいらっしゃい
ましたら、<[email protected]> までお知らせいただきたく存じます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

メル・プラッツ 2010年度オーガナイザー 伊藤昌亮(愛知淑徳大学)
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※メル・プラッツは、以下の運営メンバーによって運営されます。
飯田豊/伊藤昌亮/宇治橋祐之/岡田朋之/小川明子/加島卓/北村順生/
金ヨニ/見城武秀/駒谷真美/境真理子/坂田邦子/砂川浩慶/高宮由美子/
崔銀姫/土屋祐子/鳥海希世子/中川一史/林田真心子/古川柳子/
ペク・ソンス/松井貴子/水越伸/水島久光/宮田雅子/村田麻里子/
本橋春紀/山内千代子/劉雪雁
(29名、アイウエオ順)

□お問い合わせ・電子メール送り先:
メル・プラッツ事務局<[email protected]>

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