北京の暑い一日

団体旅行で中国に来ている。

北京上空の景色は、機内中央の席にいて、映画(A Star Is Born)に没入していたので、見えなかった。地上から見た空は、やや黄色がかった白色で霞んでいる。空港でやや息苦しさとのどの痛みを感じたので、あわててマスクを着けのど飴を口にする。乾いた空気でなんとなく粉っぽい。ただ、おそれていたほどの大気汚染はなさそうだ。ときおり青空ものぞいている。ガイドさんによると、北京で走るバイクはすべて電動、ストーブの練炭は禁止、近郊の工場も閉鎖され、大気環境はずいぶん改善しているそうだ。

北京中心部の散策時間に、同行している方々と天安門広場に行ってみる。広場は監視カメラだらけ。警官も多数立っている。天安門広場に行くときは、名札を外すようにと、ガイドさんが忠告する。順路が指定されていて、集団で一気に広場に入ることができないようになっている。広場に入るには、セキュリティチェックがあり、パスポートか身分証のチェックと荷物の検査を通す。門から紫禁城方面に入ると一方通行で戻ることができない。徹底的に環境が管理されている。毛沢東の肖像画とともに記念写真を撮るだけで踵をかえした。

きょうは、今年はじめての最高気温37度か38度の日だそうで、とても暑い。湿度は低く、風が吹いていたので、何とかしのげた。つきさすような日差しで熱中症になりそうだったので、スターバックスに逃げ込む。現金をまったく持ってきていないけれど、WeChat Payで支払うことができた。事前に、羽田空港のポケットチェンジでチャージしておいた分だ。米ドル、台湾ドル、日本円からそれぞれチャージすることができた。為替レートも悪くない。

SIMロックフリースマホに事前に挿しておいた香港のSIMカードは、入国と同時に無事アクティベートしたので、GoogleやFacebookなど普段どおりに使うことができた。ホテルのWiFiにつなぐと金盾に阻まれ、GoogleやFacebookにはつながらない。VyprVPNを経由してみたら、ほどなくWiFiが切れた。この方法ではうまくつながらないのかもしれない。

追記:翌朝早く、香港サーバ経由にしたら変えたらつながった。いろいろ試すとよいのかもしれない。

阿部共実,2014,『ちーちゃんはちょっと足りない』秋田書店.

なにかの評で買って積んでいたのを、まったく前情報なしで読んだ。中学生たちの日常を描いたほのぼのした漫画かとおもいきや、人間の心の闇を描く恐ろしい作品だった。

まず、タイトルにだまされる。ちょっと足りない=知能の発達がおくれている、ちーちゃんの言動をあたたかく見守る物語だととらえてしまう。実際には、ちーちゃんをとりまく同級生たちの群像劇だ。なかでも、ちーちゃんの友人、ナツが真の主人公だった。

読み進めてわかるのは、何か「足りない」のは、ちーちゃんではなく、ナツのほうだということ。いつも周りと比べて、欠乏感と羨ましさばかりが募らせている。ちーちゃんとつきあっているのは、友情なのか、「足りない」同士という連帯感なのか。

ちょっとした事件をきっかけに、ちーちゃんの周りの人間関係が大きく動く。しかしナツだけは変わらず、「足りない」ままだ。それでもナツは、ちーちゃんにすがる。そこに友情はあるだろうか。こども時代に周りとのささいな差異になやんだことのある者なら、だれでも思いあたるところがあるだろう。心の奥にしまっていた苦い思い出を浮かび上がらせる残酷な物語だった。

ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)

ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)posted with amazlet at 19.06.13阿部 共実
秋田書店 (2014-05-08)
売り上げランキング: 22,530
Amazon.co.jpで詳細を見る

内田伸子,2017,『子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」』春秋社.

発達心理学の専門家による子育て本である。一斉保育から自由保育に切り替えると宣言していた園長先生がすすめていたので読んでみた。発達における性差(物語型と図鑑型)、認知革命、ことばの獲得、絵本、スマホ、英語学習など、未就学児までの育児のトピックを研究成果をもとに解説する。

育児本には地雷が多い。学力格差の恐怖をあおる扇情的な本や、ひたすら道徳的にとく説教本、ひとりの母による成功譚(サンプル1!)があふれている。そうした有象無象の本の群れから本書は抜きんでている。

本書がうたう子育ては、自律的思考力や創造的創造力をはぐくむように子どもの気持ちによりそうという、きわめて凡庸なものだ。けれど説得力はある。とくに、一斉保育よりも、自由保育。強制型しつけではなく、共有型しつけをすすめるところ。経済格差が学力格差につながるのではなく、親の子への接し方が決定的であるという信念をかんじた。もちろん経済格差は大きな要因ではあるが、しつけのしかたがそれを上回るということだ。

凡庸だと書いたが、意外な発見もあった。体操教室など運動系の習い事をしていると運動嫌いになる可能性が高いのだとか。教室の内容が一斉保育、強制的しつけに近いからだろう。

本書では、英語の習い事は、語学の習得には役に立たないと断じている。しかし、外国人や外国語に触れる経験は、世界の多様性をしることになり悪いことでないのではと感じた。

さいごに著者の提案をまとめておく。

1.子どもに寄り添い、可愛がり、子どもの「安全基地」になること。
2.その子自身の進歩を認め、ほめること。
 「3つのH」ほめる、はげます、(視野を)ひろめる
3.生き字引のように余すところなく定義や回答を与えないこと。
4.裁判官のように判決を下さないこと。禁止や命令ではなく提案の形で伝えてほしい。
5.子ども自身が考え、判断する余地を残すこと。

育児本のなかには、「強制型しつけ」的な本もある。いくつかの幼児教育もそうだ。子どものときに強制型しつけを受けた親は、そうした本に影響を受けてしまうのではないか。体罰を受けたことのある大人が、体罰を肯定するように。負のループを断ち切るのに、本書が役にたつとよいけれど。

(912文字・18分)

子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」

子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」posted with amazlet at 19.05.04内田 伸子
春秋社
売り上げランキング: 157,959
Amazon.co.jpで詳細を見る

そのデザインはテイストではないか

デザインということばは、誤解にあふれている。

よくある誤解は、デザインを装飾だと考えること。きれいな飾り付けをほどこすことがデザインだと信じている。この立場からは、色や形など余計な要素を足すのがデザイナーの仕事だといえる。

つぎにある誤解は、デザインをテイストだと考えること。テイストとは味わい、趣味、趣向のことだ。かっこいいセンスと言いかえることができるかもしれない。素敵なデザイン、かわいいデザイン、クールなデザインといった形容は、だいたいテイストのことをいっている。

デザインをテイストだと考えると、趣味の世界に入ってしまう。特定の時代の潮流や、あるデザイナーの作風が好き、というように。デザインをテイストで語ると、主観的な好き嫌いの影響を受け、語り手の狭い了見で評価をくだすことになる。

デザインとは、そんな小さな範囲の問題ではないのだ。本来、テイスト云々よりも基底にある、よりロジックな設計や思想を指す。

しかしデザインという語は、テイストと同義でつかうほうが世に受けるためか、この誤解はまだまだとけそうにない。

(466文字・10分)

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論posted with amazlet at 19.05.01D. A. ノーマン
新曜社
売り上げランキング: 3,243
Amazon.co.jpで詳細を見る

ドラマ「シリコンバレー」が面白い

Amazon Videoで何気なく見てしまったドラマ「シリコンバレー」が面白い。現時点でシリーズ2の途中まで見ている。

ITスタートアップと巨大企業の対立を描く。さえない主人公と、その仲間のキャラクターが濃い。とくに気に入っている人物が、ギルフォイル。自身の技術力に自信をもつ不遜なハッカーだ。こういう顔つきの人、ほんとによくいる!という感じ。IT業界のことを知っていれば、笑えるネタがたくさんちりばめられている。基本的にコメディで内容はとても下品。こどもには見せられない(R15)。

アメリカのドラマの面白さは、テンポのよさにある。CPSが異常に高い。CPSというのは、いま作った造語で、Cost per secondの略。1秒当たりの予算だ。短いシーンにも惜しげもなく予算をかけている。これが日本のドラマだと、たとえ脚本が面白くても、低いCPSにとどめるために、ぜいたくなシーンでも長く使うことで、間延びしてしまうのだ。

毎回のオチを振りかえると、多くはだれかにとって気まずい場面だ。面目がつぶれる、きまりの悪いシーン。人間のメンツやプライドを皮肉り、くすりと笑わせるネタから、プロットを組み立てているのかもしれない。

このドラマは、メディア技術史の教材ビデオとしても使える。主人公率いるパイドパイパー社の圧縮技術は非常にすぐれているものの、普及させるには幾重もの障壁が立ちはだかる。新技術の普及は、決して優れた技術が自然に選択された結果ではなく、社会的に構成されていく。「シリコンバレー」は、そのことを面白おかしく描いているからだ。

ただし下品すぎて、授業で見せることはできない。

(688文字・14分)

シリコンバレー:シーズン1 (字幕版)

シリコンバレー:シーズン1 (字幕版)posted with amazlet at 19.04.28 (2017-12-04)
Amazon.co.jpで詳細を見る

Silicon Valley
https://www.imdb.com/title/tt2575988/